去る2月7日(木)、貧困・開発ユニット、保健医療ワーキンググループが中心となって、「グローバル・ヘルスに関する市民社会シンポジウム~TICADIVとG8サミットへ向けて、世界の市民社会から、今、日本への期待~」を開催しました。
開催が決定してから準備や広報には実質1週間ほどしか割けず、しかも平日午後の開催であったにもかかわらず、会場となった東京都港区「女性と仕事の未来館」ホールには、のべ100名ほどの聴衆が集まり、海外から招かれた市民社会の代表者たちの話に熱心に耳を傾けていました。
シンポジウムでは、まずジョイセフの石井澄江氏がアフリカの女性の一生を起点として、感染症、保健システム、ジェンダーなどに視野を広げ、保健課題がいかに重大であるかを訴えました。2015年を達成期限とするミレニアム開発目標(MDGs)のレビューにおいても、保健分野の遅れが指摘されています。沖縄サミットで世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)設立のきっかけをつくった日本政府に対し、今年のG8サミットにおいても、保健分野への投資を質・量ともに拡大することを期待している、と伝えました。
次に、オックスファム・イギリスのモガ・カマル=ヤンニ氏が「保健システム強化」について解説しました。保健システムは、インフラ、人材、医薬品・物資、情報システムの4本の柱によって構成されており、このうち1本でも不備があれば、保健システム全体が機能しなくなる、と訴えました。また保健システム強化の障壁は、資金の不足とドナー間協調の欠如にあることを明らかにし、ドナー国と途上国の政府・市民社会がともに行動計画を策定し、長期的に支援を行うことの必要性を強調しました。
続いて、アフリカ公衆保健権利同盟・15% Nowキャンペーン(アフリカ各国政府に対し、国家予算の15%を保健分野にあてることを求めるもの)のロティミ・サンコレ氏が講演しました。ロティミ氏は、現在のアフリカが抱える課題に向きあうためには、まず大西洋奴隷貿易と植民地政策によって人々が分断され、きわめて脆弱な国家基盤が形成された負の遺産、さらに世界銀行や国際通貨基金の政策により国家財政の緊縮が強いられ、保健・教育など社会セクターへの投資が妨げられたという背景を理解することが必要だ、と語りました。そして医師や看護師の不足がもたらす深刻な状況を示し、その原因に医療従事者がアフリカから欧米に流出する頭脳流出の問題があり、この根底にはドナーであるはずの欧米諸国による作為的な政策がある、と明示しました。そしてロティミ氏は、「頭脳流出」に直接加担していない日本こそが、G8諸国を主導し、現在の国際政策を是正していってほしい、と訴えました。
一方、国際家族計画連盟のヴァレリー・デフィリポ氏は、MDG4(乳幼児死亡率の削減)とMDG5(妊産婦の健康の改善)に焦点をあて、安全な出産を保障すること、また望まない妊娠を防ぐことの重要性を指摘しました。母親が死亡した家庭における子どもの死亡率は、父親が死亡した場合に比べて高いことを示し、家族にとって、またその国の未来にとって、女性の健康がいかに大切かを訴えました。そして聴衆に対し、市民社会の一員として、納税者として、税金の使途や援助のゆくえを見届けて、働きかけていってほしい、と語りました。
そして、ケニア・エイズNGO連合のルーシー・シェジーレ氏は、MDG6(HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止)の視点から、主に結核・HIV複合感染に焦点をあてて語りました。感染症は国境をこえて拡がること、これを食い止めるためには検査・ケア・予防・治療に対する継続的な支援が不可欠だと訴え、必要としているすべての人々に保健サービスが行き届くよう、市民社会が政府に対して責任を求めていくことが重要だと述べました。
講演終了後のパネルディスカッションと質疑応答では、多くの質問を会場にご来場の皆様からいただき、密度の濃い議論が行なわれました。
頭脳流出の要因をめぐっては、独立後半世紀を経たアフリカの発展の障壁にある過去5世紀に及ぶ奴隷貿易・植民地支配の不正義と、現在も続く欧米諸国による不公正な政策決定によるインパクトが指摘され、国際社会の政策がいかに途上国の人々の暮らしに影響を及ぼすかが、明らかにされました。この状況を解決するためには、NGOも、現地コミュニティで活動するだけにとどまらず、自国の政府や国際社会に対して働きかけて、貧困を生み出す現在の仕組みそれ自体を変えていくことが必要だ、と訴えられました。
最後に、健康は人権であること、そしてこの人権をすべての人に保障するために、私たちひとりひとりがグローバル・シチズン(世界市民)として、また納税者として、政府に対して公約履行と説明責任を求める「アドボカシー」が必要であることを改めて確認しました。
こうして市民社会の一員である私たちひとりひとりに宿題を残して、シンポジウムは幕を閉じました。







