すべての人が平和に生きる権利を実現するために
~人権・平和ユニットの提言概要
川崎哲(人権・平和ユニット・リーダー/ピースボート) 2008年は、「世界人権宣言」の採択60周年です。当時、非暴力で争いを解決し、平和を築くこと、そのために、軍備を縮小し、多様な歴史と文化を尊重しながら、等しく人権を保障するという考えが世界に広がりました。1975年に、先進国の政策調整会議として始まったサミットは、冷戦が終わると、世界を指導する特権的会議へと変化してしまいました。
世界では今、「対テロ戦争」によって歯止めがなくなった暴力主義と軍事化が連鎖反応を引き起こしています。2001年以来、世界の軍事費は右肩上がりで増え続け、年間1兆ドルを超えています。その7割が、G8諸国の支出です。
非暴力と対話、人権と人間の安全保障を実現することが国際社会の緊急課題です。イラク戦争の違法性を認めることに始まり、暴力や差別の原因である近代以降の不正義や不公正、奴隷貿易や植民地主義、帝国主義戦争とそれに伴う過去の人権侵害に対し謝罪、補償することも必要です。民主的で透明性のある国際協力、公正な多国間主義が再生されなければなりません。
また、21世紀に入り、競争原理と企業優先いわゆる経済のグローバル化が進められ、「自由と繁栄」よりも、不必要な監視と管理、理不尽な格差と不安、弱い立場にある人びとへの暴力が蔓延していることに、G8諸国は目を閉ざすべきではありません。
人権・平和ユニットでは、このような考え方の下で、次のような提言を行っています。
(1)平和に関する提言
●核軍縮・不拡散政府は北朝鮮やイランの「核拡散」問題を取り上げたいとしていますが、私たちは、アメリカをはじめとする核保有国に「核軍縮」を主導する特別の責任があることを強調しています。被爆国・日本で開催されるサミットであること、また、地球温暖化問題が原子力の世界的拡大を予想させていることが、この問題の重要性を増しています。
●通常兵器の軍縮
武器貿易条約(ATT)の早期締結、クラスター爆弾の全面禁止、対人地雷禁止条約の強化、劣化ウラン兵器の使用禁止などを求めています。
●紛争予防・平和構築
当事者主体、人間の安全保障、非暴力、ジェンダー平等などを紛争予防・平和構築の「原則」として確立し、G8として宣言を出すことを求めています。そのための市民社会と政府、国際機関のパートナーシップ、また、国際基金などの創設も重要です。
●地域情勢
イラクからの外国軍の撤退、イランの核問題の平和的解決、占領60周年にあたるパレスチナ情勢における平和と人権の確立などを求めているほか、朝鮮半島情勢については東北アジア非核地帯化を提言しています。
(2)人権に関する提言
●反「テロ」政策「テロ」対策の名の下での、貧困層の弾圧や入管法改訂などによる移住者の取り締まり強化、差別的扱い、難民受け入れ拒否、排外主義などを止めるよう求めています。
●先住民族
昨年国連総会で採択された「国連先住民族の権利宣言」を完全に尊重し、宣言に明記された権利が各国において完全に保障されるよう努力することを各国に求めています。とくに今回のサミットが北海道で開催されることから、この問題は重要です。
●ジェンダー平等と人権
ジェンダー格差に基づく社会の暴力や差別をなくすよう、各国の取り組みを求めています。また、紛争予防・平和構築・軍縮を含む平和プロセスの全過程で、社会的性差から解放された平等な参画が保障されることが必要です。
●グローバル経済と人権
格差社会の進展により犠牲になった人々に対するセーフティーネットの再構築を求めています。国連グローバル・コンパクトを含め、各国の企業が人権と平和の責任を果たすべきです。
●その他の人権課題
監視社会、マイノリティ、障がい者、高齢者、移住労働者、その他虐待問題等について提言を行っています。
(3)アフリカに関する提言
アフリカがG8の大きな議題になることに鑑み、武器移転の統制、アフリカ地域人権機関の強化、紛争および人権侵害の責任者に対する司法、経済発展と人権保障といった諸点をあらためて強調しています。そして、多大な民間人犠牲者を生み出しているスーダン・ダルフール紛争およびソマリア情勢について、国際社会の積極的な行動を求めています。(4)クロスする課題
貧困・開発や環境・エネルギー問題における人権・平和の視点、そして課題横断的な連携が重要です。そして、NGO・ボランティア活動を支える基盤を強化すると共に、こうした取り組みにおけるジェンダー平等、関連する国内・国際的制度改革および教育の普及を求めています。以上のような提言に加え、私たちは、この一年間の一連のG8会合のあり方じたいが、市民に開かれ、人権を重視したものになることを求めています。







