北海道洞爺湖サミット報告会 NGOはG8サミットをどう見たのか?
日時:2008年7月29日(火)午後6時30分~8時30分
会場:早稲田奉仕園スコットホール(東京都新宿区)
2008年G8サミットNGOフォーラムは、7月29日(火)夜、北海道洞爺湖サミット報告会「NGOはG8サミットをどう見たのか?」を開催し、約130名の参加者を得て、今回のサミット・プロセスを振りかえり、分野ごとの視点から政策的な評価を発表しました。以下にその概要をご報告いたします。完全な報告については、議事録(後日アップ予定)をご覧ください。(尚、名前に下線が引いてある発表者はクリックすると発表者のプレゼンテーションをご覧いただけます)
開会あいさつでは、星野昌子代表が「この2008年をアドボカシー元年にしようと申してきましたが、分野を越えて140を超えるNGOが集まり、G8にむけて発言しようとしてきました。これは初めてのことです。国際社会からも日本のNGOはうまく動けたと評価されています。これから詳細、評価に移りますが、活発な意見交換をしたいと思います。みなさまの協力でここまできました。ありがとうございました。」と述べ、報告会がスタートしました。
1.全体活動報告~これまでのプロセスを振り返る
下澤 嶽氏(JANIC:フォーラム事務局)は、これまでの1年半のNGOフォーラムの歩みを、時系列的に写真を使って説明しました(フォーラム年表も参照)。続いて、環境ユニットリーダーの大林ミカ氏(環境エネルギー政策研究所:ISEP)は、G8プロセスでのNGOによる政策提言活動を2006年のロシアから紹介し、これまでNGO・市民社会がどのように政府と対話の場を持ってきたのかについて説明しました。特に、G8シェルパとNGOが議論をした「Civil G8対話」や、首相とNGOとの会合、
国際メディアセンター(IMC)でのNGOの活動などについて報告し、このように外務省との対話では一定の成果があったとしながらも、「逮捕者などを含め、NGOへの(日本政府の)対応は変わっていない」と指摘しました。キャンペーンチーム・リーダーの岩附由香氏(ACE)は、「100万人のたんざくアクション」で、国内外のNGOによるキャンペーンを含む集計結果として、約71万という数を集めることができたと報告しました。
同キャンペーンの成果として、①提言活動の裾野拡大(市民が提言活動に賛同し参加する機会の創出)、②海外・国内キャンペーンとの連携(市民社会の声をまとまって見せることができた)、③メディア・対外広報(NGOフォーラムの存在の視覚化)、④フォーラム内部(ユニットを越えた協力・参加)、の4点を指摘し、「3ヶ月早くできたらよかったが、大勢の人に協力してもらい、キャンペーンをさせてもらった。今後につながると思う」と述べました。
2.北海道洞爺湖サミットへの評価
フォーラムの各ユニットの代表者から、それぞれ政策的な評価を発表しました。
環境ユニットからは、気候変動、生物多様性、3Rイニシアティブの3つの分野から報告し、気候変動について山岸尚之氏(WWFジャパン)は、「一言で言えば、G8は大きな前進を見せることができなかった。事前の期待、前回のG8でどのような成果があったのか、バリロードマップなどを鑑み、評価した。これまでの温室効果ガスの排出はG8の国だけで6割。昨年のG8では「2050年までに半減することを真剣に検討する」だった。被害を最小限に抑える為には、不十分だった。バリでは、途上国が初めて「排出削減について何らかの行動を起こす」と合意した。途上国から先進国に対して、ボールが投げられた状態になった。G8ではその投げられたボールにどう対応するかが重要だった。長期だけではなく、中期目標を示すことができるのか重要だった。今回のサミットでは、中期目標を具体的な数字を持って示すことができなかった点が不十分な点だ。MEMでは、ブッシュ政権による政治的"ポーズ"で成果を残すことはできなかった。NGOフォーラムがあったからこそ、"環境大臣会合"や"G20"などにNGOが参加することができた」と評価しました。また、生物多様性については
道家哲平氏 (日本自然保護協会)が報告し、「サミットの場で生物多様性が議題に上がったのは、ハイリゲンダムサミットから。日本は、2010年に非常に重要な、生物多様性条約第10回締約国会議が決まっていた中での開催だった。評価としては、「2010年はおおいに不安」。生物多様性に関する記述が少ない。政治レベルで解決すべきことに触れなかった。私たちは、「洞爺湖サミット首脳宣言」、「神戸・生物多様性のための行動よびかけ」を実現させるよう働きかけなければならない」と総括しました。3Rイニシアティブについては、安間武氏(化学物質問題市民研究会)が報告し、「サミットの宣言文案には「神戸3R行動計画を支持する」とあり、評価すべき点もあるが、
<国際資源循環という名目で、途上国に廃棄物を押し付けるという構図は変わらなかった。総合評価点は10点。評価すべき点は、国内3Rの重要性を述べるなど。不十分な点は、ポジションペーパーで論点を挙げていたが、バーゼル禁止修正条項の発効ができなかったこと等。その後、バーゼル条約締結国会合で、バーゼル禁止修正条項の発効を先送りさせたなど、納得のいかない行動が多い」と評価しました。
貧困・開発ユニットからは、石井澄江氏(ジョイセフ:ユニットリーダー)が報告し、「今年は途上国でのMDGs(ミレニアム開発目標)達成への不安材料が多い。食料危機などが含まれる。しかし、G8では対策が打ち出されることはなかった。G8コミュニケの草案でグレンイーグルズ公約の数字が抜けているとフィナンシャル・タイムズ紙が報じ、NGOがグローバルの動きを開始したことで、シェルパを動かし文面が戻ったとされた。しかしG8は政治的意志が欠落しているとの評価である。保健については、日本が最も力を入れたのは「洞爺湖国際保健行動指針」。アカウンタビリティーに関して、既存の誓約の実施状況のフォローをするのは評価できる。保健システム、マラリア対策も評価できる。しかしハイリゲンダムの600億ドル誓約は3年ではなく5年として落ち着いた。母子保健への積極的なコミットはなかった。
HIV/エイズについても同様。焦点は、来年のイタリアでも継続できるかという点。教育については、保健の分量に比べて少なく、バランスが悪い。教育分野での優先順位が低いままである。TICAD(アフリカ開発会議)では投資の倍増などの貢献が出たが、G8では出なかった。食料価格高騰問題については、資金支援では新しい資金コミットがなかった。気候変動と貧困という面では、貧困層に影響を与える気候変動に対する予防責任が果たせていないし、また気候変動対策の資金をODAから出すということになっている。前進がなかったのは日本のみ責任ではなく、イタリアやカナダ政府は腰が引けた状態だった。アカウンタビリティーも曖昧だったし、G8が途上国の貧困削減に消極的だった。国内的には政策面でNGOと政府の協働に新たな進展があった。MDGsの中間評価に向けてもフォローアップがさらに必要である」と報告しました。
人権・平和ユニットからは、川崎哲氏(ピースボート:ユニットリーダー)が報告し、「人権・平和を掲げてきた意味とは、環境・貧困を議論する場合にも人権・平和の視点が必要だと言い続けてきたことに意味があるし、この連携は今後に活かされるべきだろう。入国管理と警備の観点からみると、過剰警備や入国管理が非常に厳しく、市民に開かれたサミットとは言い難い。G8の正統性に関しては、G8そのものがインパクトがなかったと思うし、8カ国でいいのかという声がG8の中から上がってきている。またG8だけが議論する枠組みではない。宣言に何が載ったかというだけでなく、G8がほかの枠組みの議論を進展させたのかという相対的な視点を持って、G8を評価しなければならないと思う。先住民族というのはG8のアジェンダでは無かったが、アイヌ民族が先住民族に認められたのは評価できる。G8では原子力と核不拡散が議論に上ったが、下院議長サミットが9月に広島で開催され、そこでも平和及び軍縮がメインのテーマとなっているので、今後も働きかけていきたい」と述べました。
上村英明氏(市民外交センター:ユニットサブリーダー)は、「G8そのものは、成果に結びつかなかったが、G8が与えた影響は非常に大きかった。先住民族の権利に関する国連宣言が出された。アイヌ民族が先住民族という国会決議が出された。7月には北海道で先住民族サミットが開催され、アイヌ民族として統一的な活動をするかも話し合われた。Civil G8対話の時も、環境・開発に関して先住民族が非常に重要なファクターだと話されていたが、G8の宣言では全く触れられなかった。アトラクションとして先住民族が扱われるという状況が変わらなかった。先住民族サミットでは、再来年G8カナダで先住民族サミットを行いたいとの発言がいくつかあった」と報告しました。
3.「市民サミット2008」とG8サミット市民フォーラム北海道
G8サミット市民フォーラム北海道共同代表の秋山孝二氏は、G8サミット市民フォーラム北海道の設立からの経緯とその活動を報告し、NGOフォーラムと共同で開催した「市民サミット2008」について報告しました。
「市民フォーラムの目的は、G8サミットを市民に開かれたものにする、アイヌモシリの問題をグローバルな視点で協議する、道内のNGO、NPOが一緒に活動し「市民の声」をサミットに反映させることだった。「市民サミット2008~世界は、きっと、変えられる。」では、期間中40を超えるワークショップが行われ、のべ2000名が参加した。市民サミット終了後の13、17日に読売や朝日の新聞でNGOという存在が、「サミット様変わり」や「地球市民台頭し圧力」という見出しで紹介され、大きく報道された。活動を通しての課題としては、個々に関わった人はそれぞれ十分な手ごたえを感じているが、NGOフォーラムと地元としての市民フォーラムの機能分担について、もう少し情報共有がされていればもっと出来ることがあったのではないかと思っている。またメディアと北海道の関係構築について、IMCでNGOのメディアに対するリリースの多さや迅速な対応を見て、市民サミットでもメッセージの多いワークショップもたくさんあったにも関わらずメディアの対応、こちらからの発信ができなかったのを残念に思った。当日地元では札幌3ヵ所で市民メディアセンターが設立され活動していた。また市民キャンプや先住民族サミットなどもちろん課題はあるが、これまでと違うステージで活動出来た。警備については、デモで逮捕されたとか、されてないということ以上に、札幌市民にとっては非常に過剰な警備であったと感じている。たくさんのファインプレー、新しい動きを見た。見てしまったものの責任として今後の北海道におけるNGO活動のステップアップにつなげなければならないと考えている」。
4.質疑応答
質疑応答の冒頭で、寺中誠氏(アムネスティ・インターナショナル・ジャパン:人権平和ユニットサブリーダー)は、今回のサミットにおける警備問題について報告しました。
「人権・平和ユニットでは当初から、G8にまつわる警備強化や入管体制に関して懸念をもっていた。開催のあり方という文章を作成し、それを受ける形で反G8団体も含め連絡を取りながら対応策をつくってきた。警備の過剰さと入管対策に関するホットラインを設けて対応してきた。これ自体はフォーラムの活動というより、フォーラムを含めた横断的な活動だった。反G8活動への強い締め付けが存在し、それが顕著に表れたのが入管体制だった。ビザの発給の遅延、及び発給の際に障害を与える、そして入管で止められる事態が発生した。何人かについては7月4日までに日本を退去するように制限等が加えられた。千歳においても、止められたり、韓国からの訪問者は帰される事態が起きた。もう一つの問題として、デモが起きたときの逮捕者が出たのだが、これは北海道だけでなく、東京や大阪でも警察の取り締まりが発生し14人の逮捕者が出ている。過剰な警備によって引き起こされた逮捕者だという側面を無視できない。一緒に活動した弁護士からも「G8を理由にして極めて厳しい警備が敷かれ、その中で様々な事態が発生している」という声が出ている。G8を問うこと自体を、市民の活動として確保しないといけない部分であり、それに対して必ずしも好ましい対応が政府当局からあったわけではないことを明記しなくてはならない」
閉会あいさつ
鮎川ゆりか氏(気候ネットワーク:2008年G8サミットNGOフォーラム副代表)は、「これまでの、ほかの方がいいたかったことを代弁してくれた。そもそも3つユニットが合同し一緒に活動することは、非常に大変だったが、意義のあることだったと思う。アプローチも違うNGOがここまで一緒にやってきたことは大きな成果だった。一番の目的は市民参加、開かれたG8を行うことだったが、TICAD、環境大臣会合などのいろいろな会議に参加することができ、また最終的にはIMC(国際メディアセンター)にも参加し、市民参加・開かれたG8ということに関しては非常に成果があったと思う。政府との交渉の中で勝ち取ってきたものは多い。NGOと政府との関係に関して、NGOの専門性はどんどん蓄積されており、政府の側からもっとNGOを利用して欲しいと思っている。日本の政府も今回そのことを学んでもらうようにすることが課題。フォーラムの成果を時期イタリアの議長国に引き継ぐことが課題で、また国内では政策を監視することが必要。これは終わりでなく、始まりです」と述べ、総括しました。
★参考資料(当日配布)
・環境ユニット資料(気候変動)
・環境ユニット資料(生物多様性)
・貧困開発ユニット資料
・人権平和ユニット資料
・キャンペーンチーム資料
・入国管理、警備関連資料
・2008年G8サミットNGOフォーラム関連新聞記事
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